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家族の後悔を減らすための支援

2018/10/18

■看取りに際してのご家族の不安を軽減する

私たちアラジンケアは、ターミナル期のご家族を在宅で看取るお手伝いをする機会がたくさんあります。

ご家族がアラジンケアを利用される一番大きな理由は「どう看取ればよいのか不安」というものだと思います。

疼痛管理を含めた様々な医療処置にご家族が対応することはハードルが高いですし、そもそも人が亡くなる過程に遭遇した経験が無く、どう対応すればよいのかわからないのが普通です。

医療行為に関しては、アラジンケアの看護師に任せ、ご家族にはとにかく「ご家族との最期の時間を大切に過ごす」ことに集中していただきます。

保険の訪問看護サービスが入ることもありますが、ご家族の不安の度合いに応じて、アラジンケアの看護師が長時間介入することで、ご家族の不安を軽減します。

 

■看取り後にやってくるご家族の後悔感情

患者のリビングウィルに応え、不安な気持ちを乗り越えて、自宅で看取ることができたご家族は、悲しみや喪失感の中にも達成感や満足感を感じているだろうと想像しがちです。

しかし、ご家族の多くは、達成感や満足感よりも先に、後悔の感情を持つことが多いということが、私たちの経験上言えます。

この後悔感情については、いくつかの研究論文でも報告されており、決して私たちの経験上だけの現象ではないようです。

「私は十分なことをやったのだろうか。」

「もっとやれたことがあるのではないか。」

このような後悔感情を持つご家族が多いのです。

 

ご家族の後悔感情を少しでも減らし、達成感や満足感を感じてもらうために、現場の看護師は言葉を通してメンタル面のサポートを行います。

さらに必要に応じて、看取り後に、ご家族へのグリーフケアも行います。

 

■医療現場の行動経済学

この後悔感情が起きるメカニズムとサポートのあり方は、アラジンケアでも課題でした。

最近、行動経済学の視点から医療現場で起こる様々な課題を解析し、解決に役立てようとする専門家がいらっしゃいます。

医療現場の行動経済学

大竹文雄・平井啓(2018).医療現場の行動経済学~すれ違う医者と患者~ 東京経済新聞社

本書の第7章に『どうすれば遺族の後悔を減らせるのか』というテーマで、分析と課題へのアプローチが書かれています。

詳細は本書を参照していただきたいのですが、人間(ご家族)が心理学的に陥りやすいバイアスに原因を求めています。

本書の分析によれば、家族の後悔感情は避けがたいのではないかと思われます。

したがって、ご家族に対しては、後悔感情が起こることを前提に、看取りの過程においてメンタルサポートを実施することが必要なのではないかと感じます。

 

■リアルでどろどろしているからこそ尊い

患者のリビングウィルに応えて自宅で看取る家族に、私たちは家族の絆や家族愛を見がちです。

しかし、現実の世の中において、複雑な家族感情や葛藤を抱えていない家族など存在するでしょうか。

それまでの家族関係から、患者に対しては負の感情しか持つことができないご家族もいらっしゃいます。

患者の最期の願いを叶えることで、それまでの家族間のわだかまりを清算しようという思いから、看取りを希望するご家族もいます。

そういう葛藤を抱えているのが、リアルな家族なのではないかと思います。

リアルでどろどろしているからこそ、患者の死に際して、その尊厳に敬意を払う看取りという行為に尊さを感じます。

そして、残されるリアルな家族に対して、最大限のサポートをしていきたいとアラジンケアは考えています。